【院進vs就職】全理系学生必見!院進のメリット・デメリットを、理系出身の3人で語る!

多くの理系学生が悩むのが、「大学院進学するかしないか問題」。
大学卒業後、すぐに就職するか、修士課程に進んで研究を続けるか……
ユースキャリア Specialistコミュニティの理系学生からも相談が多い悩みです。

そんな理系学生のために、
実際に大学院を卒業したメンバー3人が、自らの院進経験談を語りました!

周りに合わせて院進するのは将来が不安……
就職も選択肢に入れたいけど情報が少ない……
など、進路やキャリアを考え中の理系大学生の方はぜひ読んでみてください!

▼今回対談する3人

ボラセン

東京理科大学 修士課程修了
電気工学専攻

大学時代は制御工学(非線形制御)を専攻し、ドローン等を取り扱う。
大学院在学中からVTuber事務所の立ち上げ期にジョインし、上場後に独立し株式会社工房Xを起業。
また、当機構の設立に携わり、理事へ就任。各所で黒幕として従事。

本日のファシリテーター。

マリー

筑波大学 修士課程修了
東京大学 博士課程在学中
電気工学専攻

研究では、感覚を提示する新しいディスプレイの開発に従事。
一方、ユースキャリアとの連携プロジェクトであるCOLOR≡CREATIVEでは、主にIT全般の人材育成と、知識を活かしたインフラ整備などのサポートを行っている。

いしかわ

東京農工大学 修士課程修了
情報工学専攻

「困っている人の課題をテクノロジーで解決してサポートしていきたい」という思いから、大学3年時からエンジニアとして活動し始め、
現在は大手IT企業でシステムエンジニアリングに従事。

院進の決め手と進んだ結果

ボラセン

理系学部だと7割くらいの人は院進するイメージがあるけど、
みんなどうやってその選択をしているんだろう?

僕の場合、内部推薦で4年生の5月頃に進学が確定していたんだけど、
当時すでにSpecialistで活動していて、ビジネスの方向にも興味があったから、実は卒業ギリギリまで迷っていたんだよね。

2人はどのタイミングで院進しようと決めた?

いしかわ

私は研究室の同期が全員院進だったので、正直他の選択肢は考えていなかったですね。

マリー

僕は、実は学部1年生の頃から研究室に関わっていて、その頃からの「研究楽しい」という気持ちが続いていたので進学しました。

ボラセン

なるほどね。
じゃあ実際に進学して、自分は大学院向いていたなと思った?

いしかわ

私は研究自体が自分に向いていなかったですね。笑
研究って、自分で新しいものを突き詰めていくじゃないですか。それが自分の性格と合わなくて。
ただ逆に、自分は人が切り開いた道を支える方が得意だなということにも気づけました。

マリー

新しいことをゼロイチでやるのは、地味な作業がたくさんありますし、結果が出るのに時間がかかるので、忍耐力が必要ですよね。
博士課程進学を選んだ僕でも辛くなるタイミングはあります。

僕も研究が向いているかは分からないですが……院進はして良かったと思っています。
分からないことに対してのアプローチ方法を考える力や、他人とプロジェクトを進めるためのコミュニケーション力が、社会人でも研究者でも必要な能力なんだなということを理解できたのは良かったなと。

ボラセン

どちらの話も分かるなあ。
僕は、同じ研究室に敵わない天才がいたから、学部4年生の時点で自分は研究者に向いていないと思っていたんだよね。

研究って社会人としての能力も必要な上に先の見えにくい業界で、
院進する割合が多い割に、本当に研究に向いている人は少ないよな、と感じていて。
研究が向いているかどうかって、「自分は職業研究者になれる」と思えるかどうかだと思うんだよね。本当に上位の人じゃないと職業研究者としてやっていけない。
院進を選択するときにその認識がない人が多い気がするし、
そもそも、研究者ってどれくらい成功するのか?というところが明示化されていないよね。

マリー

研究者ってミュージシャンと似ていると言われることが多いですからね。
収益化できるのはトップ層だけな上に、売れるかどうかやってみないと分からないところが、まさにそうだなと思います。

いしかわ

そうですね。
あと、そもそも大学までの勉強と研究って頭の使い方が全然違うものだから、院進する前に研究生活を想像するのが難しいですよね。

勉強が得意だからといって研究が向いているとは限らない。
「自分は研究が向いている」と思っていても、院進して初めて研究生活を体験して、「あれ、思っていたのと違うな?」と思う人も多いんじゃないかな。

ボラセン

ここまで修士課程進学に対しての話をしてきたけど、博士課程についてはどうだろう?

僕は教授から博士課程に誘われはしていたけど、就職の道を選んだんだよね。
学部時代から「Tech系の会社を創る」っていう目標があって、
そのために研究者や開発者がどんな人たちなのかを知ることが目的で院進したから、2年間で十分だった。

2人はどう?

いしかわ

僕もさっきお話したように、自分が研究に向いていないことに気づいたので、博士には進みませんでした。
周りの人も修了後は就職を選ぶ人がほとんどでしたね。博士号取得を考えている人も中にはいましたが、一度就職してから取得しようという人が多い印象ですね。

ボラセン

博士課程に進む人って一気に減るよね。
そんな中、博士進学を決断したマリーくんは?

マリー

僕が博士に興味をもったきっかけは、学部2年生時の海外での初めての研究発表でした。

そこでお話しした博士課程の方々の生き方がすごく面白いと思ったんですよね。
その日から、日頃から新しい技術がどんどん出てくる環境にずっといたいな、と思うようになり、研究生活への憧れが増していきましたね。

ボラセン

マリーくんは本当に研究が合っているんだね!

マリー

ありがとうございます笑

ただ、いざ進路選択となると迷いました。
業績をなかなか上げられず、自分の能力的にこのまま進むべきか不安があったので、
いったん研究をストップしてもいいんじゃないかな、とも思ったんですよね。

それでも進学を決断したのは、ある時自分の本当の気持ちに気づいたからで……
実は修士までいた研究室がなくなってしまう関係で他の大学の受験を余儀なくされたのですが、
その時に、「どうやって博士で生き残ろうか」と無意識的に考えていた自分がいて。
あ、研究の道諦めきれていなかったんだなって気づいたんですよね。

最終的に、やっぱり研究の世界で天才の人たちと一緒に会話ができる生活ってすごく楽しいなと思って、博士の道を選びました。

ボラセン

「この人と一緒に仕事がしたい」と思う感覚はとても分かるな。
僕が今一緒に仕事をしている人たちもそう思ったのがきっかけだったりするんだよね。

理系学生は将来をどう考えている?

ボラセン

進学事情が分かったところで、今度は修了後のキャリアについて聞きたいな。

2人は大学院時代、将来のことってどのくらい考えていた?

理系の就職先選びって、所属している研究室と繋がりのある企業を紹介してもらったり、自分で一から探したり、研究とは全く違う分野のところを選んだり……と、選択の仕方が色々あると思うけれど。

マリー

僕は修士で就職するとしたら、エンジニアではなくて、研究所のプロジェクトマネージャーになりたいと思っていました。
自分は研究職をプレイヤーとしてやるよりも、マネジメントサイドの方が向いていると思っているので。

ボラセン

Specialistのメンバーはマネジメントサイドの方が向いている人、目指してる人が多いよね!
マリーくんが運営をしているプロジェクト「COLOR≡CREATIVE」も、プロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーを目指せるようなコンテンツ内容だもんね。

周りの人の就活を考えるタイミングや業種はどうだった?

マリー

一般的な就活と同じように、インターンが始まる学部2年生後半~3年生前半ないしは修士1年生のはじめ頃に考え始めていた人が多いイメージですね。
業界としてはやっぱりエンジニア系が多かったです。

いしかわ

私は精神面を第一に考えて、“大きな成功を望むこと”よりも“安定していること”を就職先選びの基準にしていました。
具体的には、公務員や、国と関わりが強く安定している企業などですね。

ボラセン

なるほど。キャリアを考え始めた頃からその考えだった?

いしかわ

最初は他の可能性も考えていました。
当時ベンチャー企業でアルバイトをしていて、そちらからも声をかけていただいていたので、そのまま就職することも選択肢にありました。
ただ、ファーストキャリアとして考えたときに、まずは大きくて安定している会社に就こうと思い、今の勤め先に決めました。
他の仕事がやりたくなったら数年後、数十年後、いつでも方向転換はできるので。

ボラセン

”ファーストキャリア”を会社選びの軸として大事にしていたんだね。
実際に働いてみて、当時のその選択は合っていたと思う?

いしかわ

そうですね。
他の仕事でも通じるスキルをつけられているので、ファーストステップとして良い選択だったと思っています。

ボラセン

2人ともそれぞれの就活の軸があったんだね!

僕は当時、結構迷っていたんだよね……
研究者が向いているとは思えないし、ビジネスも経験が浅かったから成功するか分からないし。普通の就活もしてはいたけど、腑に落ちなくて。
最終的に、ベンチャー企業がいいなと思っていたのと、当時インターンをしていた会社から声がかかったので、その会社に決めたという感じ。

周りは専門分野のインターンに行って探したり、研究室と繋がりのある会社や先輩がいる会社に行く人が多かったね。でも、意外と合わずに辞めた人も多いイメージ。
大手だから、ベンチャーだからということはなくて、人によって合う、合わないがあるんだろうね。

研究と経営の両立で活きたこと

ボラセン

大学での研究の傍ら、Specialistで経営やビジネスを学んできた中で、
経営やビジネスの勉強をしていたからこそ活きたこと、研究をしていたからこそ活きたことってある?

マリー

相互に活きたことがたくさんありますね。

社会でプロジェクトを動かすことと研究は似ているなと思っていて、
✓コミュニケーションを取って自分の主張を的確に相手に伝えること
✓スケジュールを組み立てること
✓今起きている分からないことを分解して対応方法を考えること
✓これらに付随する言語化能力
などは、事業と研究のどちらでも必要で、やっていると身に付くもの。

僕は研究の中で色んな企業と関わることがあって、これって事業で色んな企業と一緒に仕事をするときの立ち回りと変わらないなと感じました。

いしかわ

私も同感です。
ただ、その活き方というのは、積極的に研究活動をしているかどうかで変わってくると思いますね。

修士論文を書くためだけの研究だったら、経営は必要ないし、逆に研究が他で活きることもあまりない。
一方で、研究活動の中で資金調達をするなど積極的に活動するなら、経営力が必要になって、研究にビジネスの経験が活きる。

そのあたりは、修士課程の期間をどう過ごすかで違ってくると思います。

マリー

それは大事な観点ですね。

修士課程という期間の過ごし方の幅は本当に広くて、
どうやってその選択肢を認識して、自分の過ごし方をコントロールするかがポイントになると思います。

ボラセン

なるほどね。

僕も相互に役に立っていることは多いなと思っていて、
細かいところだと、
事業計画書を書く時に、解像度の高い論文を書いていた経験が役に立ったり、
ビジネスをやっていたから研究活動でも個人で企業と繋がりやすかったり。

もう少し俯瞰すると、
”研究”と”ビジネス”というまったく違う世界観の2つの業界に入れたからこそ、自分がどっちの世界でも異端であれたのは大きかったなと。
研究の界隈でビジネスのことを分かっている人はほとんどいないから、希有な存在であれたし、
逆に研究の経験があったからこそ、ビジネスの世界では人と違うビジネスモデルが作れた。
両方の良いところが取れたなと思っているね。

あとは、全然違う思想を持っている人たちに同時に触れていた時間は貴重だったなと思うね。

マリー

研究者と経営者は仕事に対する考え方が全然違いますよね。
目的となっているものの認識が違うイメージ。

ボラセン

そうだね。その辺りの感覚を得られたのは良かったなと思っているよ。

これから進路を決める学生へアドバイス

ボラセン

じゃあ最後に。
Specialistに所属している、またはこれから所属する人に、院進について相談されたらどう答える?

いしかわ

時間があるなら1ヶ月でも2ヶ月でも研究に触れてみて、自分に研究が合うかどうかを知ってから進学の判断をすることを勧めますね。
研究室選択の時期を待たずに、気になる研究室の人と話してみるのが良いと思います。

通常だと、研究室配属後すぐ、研究を知る前に院進の決断を迫られてしまうので。

マリー

僕は、“自分のやりたいこと”と“研究で詰める経験”が結びついているかどうかを考えることが大事だと思います。
将来どういうことがやりたいのか、そのために何を身に付けたいのかという話を、Specialistで院進経験のある人としてみるのが良いですね。

一番怖いのは、教授の意見を受動的に聞くこと。
それだと、さっき話したような研究で得られる能力が得られなくなるので。

ボラセン

どちらも大事なことだね。

僕は、人生設計が不安定で、自分の進路選択に納得するための時間が必要な人には、院進を勧めているよ。

それから、大学生に伝えたいのは、
大学院での立ち回りは、学部4年間の立ち回りが影響するということを認識すべきだということ。
学部生時代に自分のために上手く動けた人は院生になっても上手く動ける可能性があるし、逆はあり得ない。
だから、未来の自分に過度な期待をせず、自分の能力を正しく認識した上で、修士の2年間が自分にとって得になるかどうかを決めるのが良いと思うな。

マリー

大学院は研究力よりも人間力の方が必要、というのはありますね。
研究室という小さな組織の中だと、問題の解決が自分の能力依存になってしまうことが多いんですよ。
だから、自分で自分の問題を解決する能力と、そのための精神力がないと厳しいんじゃないかと僕は思います。

最後に

ボラセン

2人ともありがとう!

それぞれの院進した感想やキャリアの考え方があったね。
これから進路を決める理系学生がこの記事を読んで、少しでも院進のイメージが鮮明になったら嬉しいね!

いしかわ・マリー

ありがとうございました!!

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