社会人になると、何が変わる??1・2年目の先輩に聞く、仕事と自己実現のリアル

一般社団法人ユースキャリア教育機構・研究員の井上寛人です。
7月に入り、大学生の皆さんはもうすぐ夏休みですね。私も大学院で期末レポートや発表を控え、ラストスパートの時期を迎えています。

さて、皆さんは「社会人」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか?
「忙しそう」「きちんとしていそう」「しっかり稼げそう」など、人それぞれさまざまなイメージがあるのではないでしょうか。

今回は、ユースキャリアでの学びや挑戦を経て、現在は社会人1・2年目として活躍している先輩たちにインタビューを行いました。仕事を通して自己実現に挑戦し続ける先輩たちは、どのようなことを考え、何を大切にしながら日々を歩んでいるのでしょうか?

本記事が、社会人を少し身近に感じ、自分らしい進路や挑戦について考えるきっかけになれば嬉しいです。

今回のインタビューゲスト

Sさん(社会人1年目)

一人目は、社会人1年目のSさんです。

Sさんは、大学在学中から教育系団体の立ち上げに参画し、都立高校でのキャリア探究授業の講師や地方学生向けプログラムの企画・運営など、多様な教育活動に取り組んできました。

自身も経済的・社会的な制約のある環境の中で進学や挑戦を切り拓いてきた経験から、「生まれた環境によって可能性が制限されない社会」の実現を志しています。学生時代には若者コミュニティ「Hazama」のマネージャーとして、全国の若者が学び合い、挑戦できる場づくりを推進しました。

現在は大手IT企業に新卒入社し、本業に従事する傍ら、教育・キャリア支援・コミュニティ運営の分野でも活動を継続。若者一人ひとりが自らの可能性を信じて挑戦できる社会を目指し、実践と学びを重ねています。

Yさん(社会人2年目)

二人目は、社会人2年目のYさんです。

Yさんは、大学在学中から大手ITグループのエンターテインメント企業でインターンとして経験を積み、新卒入社後は長期運営タイトルの中核プランナーを担当。入社1年目でゲームプロデューサーに抜擢され、企画・開発・運営を横断しながら、プロダクト全体の推進を担っています。

また、クリエイティブチーム「COLOR≡CREATIVE」では、数百人規模のイベントプロデュースや、日本文化の継承をテーマとした新規事業の立ち上げにも携わっています。さらに個人でもインディーゲーム制作チームを主宰し、デジタルゲームやボードゲームの制作、イベント企画、文化事業など、領域にとらわれないものづくりに挑戦しています。

今回の聞き手は、大学1年生の田中ひかりさん(以下、サタン)と、大学2年生の坂本ひかりさん(以下、しいちゃん)が務めます。

異なるフィールドで活躍しながらも、それぞれのかたちで自己実現に向けた挑戦を続けるお二人。今回は、しいちゃんとサタンが「社会人になると何が変わるのか」「会社選びで大切にしたこと」「起業や独立を考える人にとって就職する意味」など、大学生の今だからこそ気になることを率直に伺いました。

社会人になって変わった「頑張り」の基準

サタン(聞き手):
お二人とも、社会人になって学生時代よりお忙しくなったと思います。限られた時間の中で、自己実現に向けた挑戦を続けるために、意識していることはありますか?

Yさん:
今はまだ若いからということもありますが、自分に巡ってきたチャンスカードは、基本的に断らないようにしています。

「こういうことをやってみない?」「一緒にやろうよ」と声をかけてもらった時には、まずやってみる。今の段階では、どの道を選ぶことが正解なのか、誰にもわからないと思うんです。だからこそ、いただいた機会から何かを学べないかと考えています。

社会人になると、学生時代より自由に使える時間は減ります。それでも、仕事の進め方を工夫したり、土日を使ったりしながら、できる限り挑戦を続けるようにしています。

サタン(聞き手)
私も今、いろいろなことに挑戦させてもらっています。ただ、時間の使い方がまだ上手ではなくて、タスクが増えるとキャパシティを超えてしまうことがあります。忙しい中で、うまく時間をつくるコツはありますか?

Yさん:
効率的なタスク管理やAIの活用など、方法はいろいろあると思います。ただ、学生のうちは、まずやってみてもいいんじゃないかなと思っています。

学生の間は、仮に失敗しても、周りの大人や先輩が助けてくれることが多い。だから、「とりあえず挑戦してみよう」と動いてみることにも意味があります。

もちろん、期限に間に合わない、任された仕事が終わらないという時には、やり方を工夫する必要があります。その時に大切なのは、無理になる前に早めに「助けてください」と伝えることです。自分だけで抱え込まず、周囲に助けを求めることも、一つのスキルだと思います。

まだ自分の得意・不得意がわからない時期だからこそ、まずはいろいろなことを経験してみる。その中で、自分に合うことや、できることを知っていけばいいのではないでしょうか。

Sさん:
私は社会人になってから、「結果につながることに集中する」という意識を大切にしています。

ユースキャリアでは、結果だけではなく、そこに至るまでの過程も見てもらえます。「頑張っているね」「スタンスがいいね」と評価してもらえることも多いですよね。

一方、会社では、基本的に結果が重視されます。自分では頑張ったと思っていても、それが売上や成果につながっていなければ、十分には評価されないこともあります。

だからこそ、ただ「やっている感」を出すのではなく、本当に成果につながることに、最も多くの時間と力を使う。結果につながりにくいことは、なるべく減らすようにしています。ここは、学生時代と社会人になってからで大きく変わった部分だと思います。

Yさん:
僕も、会社はある程度、結果を出してなんぼの世界だと感じています。

自分では「頑張った」と思っていても、「でも、売上にはつながっていないよね」と言われることはあります。会社は利益を生み出して成り立っているので、結果が求められるのは、ユースキャリアとの大きな違いの一つだと思います。

しぃちゃん(聞き手)
やはり会社は、結果主義なのでしょうか?

Sさん:
過程がまったく評価されないわけではありません。ただ、私の感覚では、過程は「加点」よりも「減点」の対象になりやすいと思っています。

例えば、返事をする、遅刻をしない、会議中に寝ない、言われたことを素直に受け止める。そうした基本的な姿勢はもちろん大切ですが、できたからといって大きく評価が上がるというより、できていないと評価が下がるものに近いです。

結果が出ていないのに遅刻をしたり、仕事が終わっていないのに帰ったりすると、さらにマイナスになる。一方で、結果をきちんと出していれば、働き方についてある程度認めてもらえることもあります。

会社によって違うとは思いますが、私の感覚では、結果が8割、過程が2割くらいです。基本的な姿勢を整えたうえで、結果も出すことが求められていると感じます。

Yさん:
僕も、その感覚はすごくわかります。

「過程はすごく良いけれど結果が出ていない人」と、「普段の振る舞いには少し課題があるけれど、圧倒的な結果を出す人」がいたら、会社では後者の方が評価されることもあると思います。

「自分はこんなに頑張りました」と伝えても、「でも、今月の目標は未達だよね」と言われることはある。社会人になると、リーダーだけでなく、一人ひとりに結果を出す姿勢が求められるのだと思います。

一方、ユースキャリアでは、たとえイベントが思うような結果にならなかったとしても、「ここは頑張れたよね」「次はこうしたらもっと良くなる」と、過程にも目を向けてもらえます。

結果が出なかった挑戦からも学びを拾い、次につなげられる。それは会社とは異なる、ユースキャリアの良さだと思います。

私がユースキャリアに入ったのが大学3年生の夏頃で、ちょうど就活を始める時期でした。

当時、COLOR≡CREATIVEの皆さんと「将来こういうことがしたいんです」と何度も話していて、「じゃあ、そのためには何が必要なんだろう」「どんなスキルや経験を持たなきゃいけないんだろう」と壁打ちを重ねながら、自分なりの人生設計を考えていました。

10年後にこうなっていたい。そのためには今何を積み重ねればいいのか。そんなことをずっと考えていたんです。

将来的には、エンタメを通じて、日本中、そして世界中の人が、生まれてから死ぬまで一生エンタメを楽しめる世界をつくりたいと思っています。

そのためには、まずエンタメ業界にいること。そして、人・もの・お金を動かせる立場になることが必要だと考えました。

だから、「今の自分はどこに行くべきなんだろう」と考えた時に、今の会社が一番自己実現に近づける場所だと思ったんです。

実は最初は別の会社から内定をいただいていました。エンタメ業界とは離れた会社だったんですが、「このままでは10年後に目指す場所へ行けない」と思って。

そこから改めて企業を調べ直して、「インターンをやらせてください」と片っ端から連絡をして、最終的に今の会社へ入ることになりました。

結局、自分の人生設計を考えた時に、「この業界、この会社にいないと実現できない」と思えたことが、一番大きな理由でした。

ひろと(聞き手)一度内定をいただいていたけれど、自分の人生設計と照らし合わせて、もう一度チャレンジされたんですね。

Yさん: 就活は、本当にうまくいかなかったんですよ(笑)。
その会社しか内定がなくて、最終的に今の会社から内定をいただいたのも大学4年生の12月でした。
でも、「ここしかない」という気持ちはずっと変わりませんでした。

ひろと(聞き手)
ありがとうございます。では、Sさんはいかがでしょうか。

Sさん:
私はYくんとは少しタイプが違っていて、どちらかというと逆算ではなく順算で生きている人間なんです。

もちろん逆算して考えられた方がいいとは思うんですけど、自分は「これがやりたい」というものが最初から明確にあるタイプではなくて。

だから、一言で言うと、「一番成長できる環境」だと思ったから今の会社を選びました。
自分ができることを増やしていける場所、自分が一番鍛えられる場所を選ぼう、と考えたんです。

ひろと(聞き手)
逆算でも順算でも、自分なりの軸を持って会社を選ぶことが重要
なんですね。

Yさん:
そうですね。

今回この質問をいただいて改めて思ったんですけど、「自分はなぜこの会社を選んだのか」を言語化しておくことって、すごく大事だと思います。

例えば、「成長したいから」でもいいし、「自己実現に一番レバレッジがかかるから」でもいい。
理由があると、大変なことがあっても、「だから自分はここにいるんだ」と立ち返ることができます。

ひろと(聞き手)
なるほど。就職活動の時だけではなく、入社した後も流されずに挑戦を続けるためには、「なぜこの会社を選んだのか」を自分の言葉で持っておくことが必要ですよね。

起業や独立を考える人ほど、就職に意味がある?

―― 将来的に起業や独立を考えている人にとって、一度就職するメリットはありますか?

しぃちゃん(聞き手)
ユースキャリアには、将来的に起業や独立を考えている研修生も多いと思います。その中でも、一度就職することにはどんなメリットがあると思いますか?

Yさん:
あると思います。

会社には、社長や責任者が人・もの・お金を動かす現場があります。学生のうちから事業に挑戦することももちろん大切ですが、自分一人では扱えない規模の仕事や、意思決定の現場を間近で見られるのは、とても大きな経験になると思います。

僕自身は、将来的にやりたいことはありますが、今の人生設計では独立はゴールではありません。まずは会社の中で事業を動かせる人になることが、自分の自己実現につながると考えています。

例えば寿司職人でも、最初から一人で店を開く人は少ないですよね。最初は大将のもとで修業して、お金をもらいながら技術や考え方を学び、その後に独立する。

会社で働くことも、それに近い感覚なんじゃないかなと思っています。

しぃちゃん(聞き手)
守破離のようなイメージですね。

Yさん:
そうですね。まさにそんな感覚です。

Sさん:
私は、人によるとは思います。

どんな会社をつくりたいのか、なぜ起業したいのか。そのために何が必要なのかを考えて、今の自分とのギャップを埋めるために会社へ行く、という考え方でいいと思います。

ただ前提として、会社で学べることは思っている以上に多いです。

会社には、個人では経験しづらい規模感があります。売上も、巻き込む人数も、動かすお金の額も全然違います。

さらに、事業を簡単には潰せないという「安定性」があります。

何千人も働く会社は、簡単には止められません。その中で事業を続ける仕組みや組織の回し方を学べることは、自分で事業をやる人にとっても、とても大きな経験になると思います。

しぃちゃん(聞き手)
学生のうちから事業をやっている人もいますが、大企業で経験を積むことには、それとはまた違う価値があるんですね。

Sさん:
そうですね。あと、学生で今すでに事業をやっていて、数千万円ぐらい作っていますという子が、「だから会社に行く必要はないと思うんですよね」と言う場合は、もうちょっと未来を想像してみた方がいいかなと思います。

今みたいな働き方は、あと何年続けられるのか。
プライベートを削る働き方を続けても後悔しないのか。
家族ができたり、年齢を重ねたりした時も、自分にとってそれが自己実現だと言えるのか。

そういうところまで考えた上で会社を経験するかどうかを決めると、見え方も変わってくると思います。

これから社会に出るメンバーへ向けて

しいちゃん(聞き手):最後に、大学生やユースキャリアの研修生へ向けてメッセージをお願いします。

Yさん:個人的には、学生のうちは本当にいろいろなことを経験してほしいなと思っています。
それはユースキャリアで経営を頑張ることだけではなく、ちゃんと遊ぶことも含めてです。

実は、自分は学生時代に「あれもやっておけばよかったな」と思うことが結構あって。だからこそ、大学生には好き嫌いを問わず、いろいろなことに挑戦して、いろいろな人と出会って、思い切り楽しんでほしいと思っています。

大学生は自由な時間もありますし、大学の友達やユースキャリアの仲間など、多様な人と出会える貴重な時期です。その経験一つひとつが、後から振り返った時に、自分の人生を選ぶための判断材料になっていくと思います。

社会人1年目は、ある意味で補助輪がついているような時期です。会社によって違いはありますが、先輩やメンターがいて、仕事を教えてもらいながら少しずつ慣れていく期間でもあります。
でも、2年目になると少しずつ補助輪が外れて、「自分でやってね」という場面が増えてきます。

だからこそ、学生のうちから自分で考えて動く経験をたくさん積んでおくことが、きっと社会に出てから生きてくると思います。

Sさん:私は、学生期間にマインドやスタンスを整えておくことが大事だと思っています。

営業やマーケティングなどのスキルももちろん大切なんですけど、社会に出ると会社が扱う仕事の規模は一気に大きくなります。学生時代に扱っていた数十万円、数百万円規模のプロジェクトが、会社では数千万円、数億円規模になることもありますし、自分より能力の高い人はいくらでもいます。

だから新卒採用では、能力だけではなく、「この人は伸びそうか」というポテンシャルや姿勢を見られていることが多いと思います。

その中で大切なのは、自責で物事を考えられるか、感謝できるか、先輩から言われたことを素直に受け止められるか、そして最後までやり切れるか、といったマインドやスタンスです。

特に、自責で考えることや素直さ、根気強く取り組む姿勢などは、ユースキャリアで大切にしている人間性の課題でもありますよね。

学生のうちに、そうした土台をしっかり身につけておくことは、社会に出てから必ず自分の力になると思います。

編集後記

今回のお話を伺っていて印象的だったのは、お二人とも「社会人になっても挑戦は終わらない」と話していたことです。

学生時代とは異なる責任や環境の中でも、自分なりの軸を持ち、目の前の仕事や挑戦と向き合い続ける。その姿からは、「社会人になること」は挑戦を諦めることではなく、新しいステージで自己実現を続けていくことなのだと感じました。

学生だからこそできる挑戦もあれば、社会人だからこそ得られる経験や学びもあります。そして、そのどちらも、自分らしい未来につながる大切な一歩です。

今回のインタビューを通して、自分が社会人になった姿を少しでもリアルに想像したり、「これからも挑戦を続けてみよう」と思えたりするきっかけになっていたら嬉しく思います。そして、これから皆さんが進路や自己実現について考えるとき、お二人の言葉がそっと背中を押してくれたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!


著者:井上寛人

ソーシャル・アントレプレナーのウェルビーイングを探究する研究者/実務家。明治大学在学中に若者による環境運動「Fridays For Future Tokyo」の立ち上げに関わり、自身や仲間の燃え尽き症候群を目の当たりにしたことをきっかけに、挑戦する人の心が壊れずにすむ社会のあり方を探究してきた。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。現在は武蔵野大学大学院ウェルビーイング研究科に在籍し、社会起業家をはじめとするソーシャルセクターのリーダーが抱える構造的ストレスの緩和と予防をテーマに研究している。