【研究者対談】「人生が変わる」人は、どう変わるのか——「未練」「転機」研究者:松本凱斗さんに聞く

人生の「未練」と「転機」の研究者、松本凱斗さんにユースキャリア教育機構がインタビュー。
松本さんは、研究と並行して、人生を変えるきっかけを届ける「転機堂」を立ち上げ、研究成果の社会実装にも取り組んでいる。

人はなぜ、抜け出したい悩みから抜け出せないのか?過去への未練を抱えた人は、どのように立ち直り、自分の人生を生き直していくのか?

今回は、一般社団法人ユースキャリア教育機構 副代表理事の高瀬信軌と、研究員の井上寛人が、松本さん自身の転機、未練の持つ意味、人が変わるために必要な環境について聞いた。

対談を通じて見えてきたのは、若者を変えるために必要なのは、正しい答えを教えることだけではないということだった。

予想外の人や体験、役割と出会い、その経験の意味を自分で選び直せること。その環境や機会をどうつくるかは、若者の自己実現を掲げるユースキャリア教育機構にとっても重要なテーマである。

松本凱斗さん プロフィール

プロフィール

開成中学・高校、東京大学、同大学大学院工学系研究科を修了後、2019年にデロイト トーマツ コンサルティング合同会社へ入社。再生可能エネルギー領域を経て、組織・人材開発領域のコンサルティングに従事する。2022年から慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の博士課程に進学し、心の回復と成長を導く「人生の転機」を研究。2025年には、人生を変えるきっかけを届ける「転機堂」を開業。

人はどのように、別の生き方へ移っていくのか?「転機の研究者」

高瀬: 松本さんは「転機の研究者」として活動されています。そもそも、「転機」を研究するとはどういうことなのでしょうか?

松本: 人生の転機という意味での「転機」を研究しています。ただ、英語でいうターニングポイントのように、人生が変わった一点だけを見ているわけではありません。最近は「トランジション」という言葉のほうが、自分の研究対象に近いと考えています。

ある出来事が起きて、翌日から突然別人になるわけではないですよね。その前に戸惑いながら色々模索したり、何かを失ったように感じる時期があり、新しい人や体験と出会い、少しずつ物事の捉え方が変わっていく。転機とは一つの点ではなく、その前後を含めて人が変わっていくプロセスだと思っています。

高瀬: 動画編集でも「トランジション」という言葉を使います。ある場面から次の場面にどうつなぐか、という意味です。人生も、AからBへ一瞬で切り替わるのではなく、その間に移り変わる時間があるということですね。

松本: まさにそうです。ゆっくり変わることもあれば、ある出来事をきっかけに大きく動くこともある。変わり方も人によって違います。僕は、必要なときに人生の転機と出会える人が増えたら、世の中はもう少し面白くなるのではないかと思っています。

現在、松本さんは研究だけでなく、「転機堂」という形で研究の社会実装にも取り組んでいる。転機堂が掲げているのは、人生を変えるきっかけを届ける「体験のセレクトショップ」だ。新しい遊びや社会活動など、その人が普段は選ばない体験を提案し、誰かと一緒に踏み出せる形で届けている。

転機を研究しながら、転機が生まれる体験そのものをつくる。松本さんが研究と実践を往復している背景には、自身が長く「変わりたいと思うことすらできない状態」にいた経験がある。

正解を出すことは得意でも、自分の人生は選べなかった

高瀬: 転機を研究するようになった背景には、松本さん自身の経験も関係しているのでしょうか?

松本: 大きく関係しています。僕は子どもの頃から、周りが求めていることに応えるのが得意でした。勉強も嫌いではなく、パズルや本を読むことも好きだったので、学校教育とも比較的相性が良かった。出された問いに対して、答えを出す能力は磨かれていったと思います。

一方で、どの学校へ行くか、どこに就職するかといった人生の選択を、自分の意思で決めてきた経験はあまりありませんでした。親や周囲がどう思うかを先に考えて、その期待に応える。そうやって積み上げていけば、人生もうまくいくと思っていたのだと思います。

就職活動でも、コンサルティング会社、大企業、ベンチャー企業と幅広く見ていました。今振り返ると、「自分はこれをやりたい」という軸があったというより、世の中にある正解を探していたのだと思います。

心が動いていた企業もありました。しかし、周囲の反対を押し切ってまで選ぶほど、自分の気持ちを信じることができなかった。最終的には消去法に近い形で、コンサルティング会社への入社を決めました。

高瀬: 入社後は、仕事自体もかなり大変だったそうですね。

松本: 最初に入ったチームは、長時間労働が多く、上司の指示も非常に強い環境でした。ただ、僕はその上司が求めることに応えるのが比較的得意だったんです。仕事ができないわけではなく、むしろ評価されていた。だからこそ、余計に抜け出しにくくなりました。

働く時間の長さだけでなく、自分が何のためにこの仕事をしているのか分からなくなったことも大きかったです。僕は、コンサルタントとは企業や人の困り事を解決する仕事だと思っていました。しかし実際には、クライアントや社内の論理を優先して資料をつくる場面もある。「自分は何をしているんだろう」という感覚が強くなっていきました。

「ここではない」とは思っている。でも、ではどこへ行けばいいのかは分からない。転職すればいい、辞めればいいと外からは簡単に言えますが、当時の僕には、辞めることさえ自分で決められませんでした。辞めるに値する明確な理由や、次に行く正解を見つけなければならないと思い込んでいたからです。

仕事は続けられている。収入もある。外からは大きな問題があるようには見えない。それでも本人は、違和感を持ちつつも変化のない状態から抜け出せない。松本さんは、このときの感覚を「停滞感」や「閉塞感」と表現する。

悲しい、苦しいという一時的な感情だけではない。今の状態を続けたいわけではないのに、どこへ向かえばいいのか分からず、時間だけが過ぎていく。この経験が、後の転機研究につながっていく。

人生で初めての自己決定が、「転機研究」につながった

その後、松本さんは部署を異動したものの、根本的な閉塞感がなくなったわけではなかった。仕事や人生に手応えを持てない中で、身近な人との関係にも変化が訪れる。自分が大切にしたいものが離れていく一方、手元に残っているのは、心からやりたいわけではない仕事だけだった。

ある日、自宅の床に寝転びながら、松本さんは「幸せになる方法」と検索した。その中で目に留まった記事が、「幸せは学問です」という言葉だった。その記事を書いた、前野隆司先生が後の彼の指導教授となる。

松本: それまで、自分の幸せについて自分でちゃんと考えたことがなかったんです。幸せを学問として研究できることも知らなかった。それを知ったときに、「少し面白そうだな」と思いました。

ちょうど仕事でも人材・組織開発の領域に移っていたので、研究を仕事に生かせる可能性もありました。働きながら大学院へ通う形なら、収入もある程度維持できるし、親や周囲にも説明しやすい。そうした条件も重なって、大学院へ進学しました。

高瀬: 大学院へ行った瞬間、生活や気持ちは大きく変わったのでしょうか。

松本: 正直に言うと、すぐに切り替わったわけではありません。進学してからも迷いましたし、今でも完全に切り替わったとは言えないかもしれません。ただ、少しずつ前向きになり、自分の中に何かが積み重なっている感覚はあります。

大学院へ進学するという判断は、僕の人生で初めての大きな自己決定でした。外から見れば、収入やキャリア上の成果にすぐつながる選択ではなかったかもしれない。それでも、「自分が過ごしたかった時間だった」という確かさはあります。そういう意味では、あの選択は間違っていなかったと思っています。

ここに、松本さんが転機を「点」ではなく「プロセス」と捉える理由が表れている。大学院進学という分かりやすい出来事はあった。しかし、その瞬間にすべての悩みが解決したわけではない。自分で選んだ時間を過ごし、その選択を少しずつ自分の人生として引き受けていく。そこまで含めて、人生の転機なのである。

「12歳の自分」を読み直す——未練から願いを見つける

高瀬: なぜ、最初に「未練」に注目したのでしょうか?

松本: 自分自身の経験から、抜け出せない悩みを抱えている人が、どうすればそこから動き出せるのかを考えたかったんです。

でも、本当にネガティブな状態にいるときは、「変わりたい」とすら思えません。変わった先に可能性が見えているから、人は変わりたいと思える。でも、可能性を見つけるためには、少し動いてみなければならない。「変わりたいと思えないから動けない。動けないから可能性も見つからない」というジレンマがあります。

そこから抜け出す最初の種は何だろうと考えたときに、「本当はこうしたかったのに」という気持ちに行き着きました。自分でふたをしているけれど、内側にはまだ残っている願いです。その願いの表れとして、未練を研究するようになりました。

未練と聞くと、忘れられない恋愛や、諦めきれない夢などを思い浮かべるかもしれない。しかし松本さんが見ているのは、それだけではない。期待に応える中で選ばなかった道、いつの間にかやめてしまった好きなこと、挑戦できなかった経験。未練の奥には、その人が大切にしていた価値観や、まだ形になっていない願いが残っている可能性がある。

高瀬: ユースキャリアでも、自分が本当にやりたいことを考えるときに、過去の後悔や未練を振り返ることがあります。例えば、「12歳の自分と向き合う」という話をすることがあります。当時好きだった遊びをもう一度やってみたり、地元へ帰ったりする中で、「この感覚が好きだった」「これは嫌だった」と思い出していく。その感覚を、今の仕事や生き方に置き換えて考えてみるんです。

松本: すごく大事だと思います。自分らしさが表れている時期は、人によって違います。幼い頃に何の制約もなく遊んでいた自分を大切にする人もいれば、中学生や高校生のときに初めて憧れる人と出会った経験が大切な人もいる。

僕自身は、2歳の頃、壁に落書きしていいと言われて、本当にうれしそうにしている自分の写真が好きなんです。普段はいい子でいようとしていた自分が、「本当に好きにしていいの?」と喜んでいる。そこにも、自分が取り戻したい生き方の原点が表れている気がします。

一方で、中学生のときに、少し年上の先輩たちから、運動会に向けて育ててもらった経験も大切です。何かができるからではなく、自分という存在そのものを応援してもらえた。「こんな格好いい人になりたい」と思える人に初めて出会った。その経験も、今の自分につながっています。

未練や後悔だけでなく、夢中になった記憶、応援された経験、誰かに憧れた瞬間も含めて過去を読み直す。その点と点をつなげていくことで、自分が納得できる人生の物語が少しずつ見えてくる。

未練とは、ただ過去へ戻りたいという弱さではない。自分が本当は何を望んでいたのかを知らせる痕跡なのかもしれない。

つらい経験を、他人が「良い経験」に変えてはいけない

過去を振り返り、経験を捉え直す。ただし松本さんは、つらい経験を安易にポジティブな物語へ変えることには慎重だ。

松本: 「あの経験があったから今がある」「つらい経験も成長につながった」と捉え直すこと自体は、一つの考え方だと思います。でも、周りが簡単に「前向きに捉えよう」と言うことには違和感があります。

未練を1年抱えている人もいれば、何十年も抱えている人もいる。簡単には解決しないからこそ未練になっているわけで、それを他人が恣意的に前向きに変えてしまうことはできません。

井上: 経験の意味づけを自分で変えられることが重要なのだと思います。誰かから「あの経験があって良かったじゃない」と言われるのではなく、自分自身で「あれがあったから今がある」と思えるようになる。意味を決める最後の部分は、本人に残されている必要がありますよね。

松本: 本当にその通りです。ポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかということも含めて、最後は自分で決める。僕が「成長」よりも「変化」という言葉を使っているのも、上へ行くこと、前へ進むことだけが正解ではないと思っているからです。

本人が経験をどう受け取り直すのか。その自由度は残しておきたい。一方で、つらかったことや嫌だったことだけをエンジンにして生き続けると、どこかで苦しくなることもあります。過去を無理に美化するのでも、なかったことにするのでもなく、自分の一部として受け入れながら生き方を選び直していく。そのプロセスが大切なのだと思います。

この話は、人の変化を支援する教育やコミュニティにも重い問いを投げかける。「あなたはこう変わるべきだ」と完成形を示しすぎれば、本人の自己決定を奪ってしまう。一方で、「好きにすればいい」と放置するだけでは、変わりたいと思えない状態から抜け出すことは難しい。

どこまで機会を用意し、どこまで背中を押し、どこから本人に委ねるのか。人の変化を支援する以上、この境界線から逃げることはできない。

「成長」だけでなく、「変化実感」を持って生きる

高瀬: ウェルビーイングという言葉も広く使われるようになりました。松本さんにとって、ウェルビーイングとはどのような状態でしょうか?

松本: 学問的には、「良い状態」「良い感じ」といった包括的な概念です。人によって何が良い状態なのかは違うので、研究者もその広さに悩みながら、各自のスタンスとして何を追究するのかを探していると思います。

僕自身が大切にしているのは、「変化実感」です。社会人になってから、自分自身が変わっていない、衰退しているという感覚がとても苦しかった。良い方向なのか、悪い方向なのか、その時点では分からなくても、自分が何かに触れて、何かが動いている。小さくても、その変化を自分で感じていられることに、人間的な営みとしての喜びがあるのではないかと思っています。

できない自分を忘れない——大人に必要な「初めて慣れ」

高瀬: ユースキャリアでは、新しいことに挑戦する人を支援する立場だからこそ、運営側も「初めてのこと」をやり続けたほうがいいと話しています。

例えば、僕は去年から、体力づくりのために水泳を始めました。周りのおばあちゃんたちのほうが圧倒的に速くて、どう直せばいいのか分からなくて、正直全然楽しくない時の方が多かったです。

でも、新しいことに挑戦している学生たちは、毎回こういう気持ちなのだと思うんです。自分が10年前にビジネスを始めたときの具体的な悩みは、もう完全には思い出せません。それでも、「分からないことだらけの場所に一人で立つ感覚」は、今も経験できます。それを僕は「初めて慣れ」と呼んでいます。

松本: 「初めて慣れ」は、すごく良い言葉ですね。僕が転機堂で提供しようとしている体験も、まさに変化に慣れるための機会なのだと思います。

いきなり人生を変えるような大きな挑戦をするのは難しい。でも、絵を描いてみる、泳いでみる、ゴミを拾いながら走ってみるなど、自分にとって新しく、少し気になることなら試しやすい。遊びながら新しい体験をすることで、変化への不安が好奇心へ変わることがあります。

大人になるほど、「できる自分」でいられる場所を選びやすくなる。しかし、できることだけを続けていると、自分が変化している感覚は失われていく。だからこそ、小さな初めてを繰り返し、できない自分や分からない自分に慣れておく。その練習が、人生の行き詰まりから抜け出す重要な力に繋がっていくのかもしれない。

人は、1人では変わりにくい——転機を生む「予想外」

松本さんが、未練から立ち直り、転機へ向かっていく人たちを研究する中で見えてきたことがある。多くの人の変化には、新しい人、新しい体験、新しいコミュニティとの出会いが関わっていたことだ。

松本: 経験の再定義を一人で行うことは難しいと思っています。新しい人と出会ったり、自分が予想していなかった体験をしたりする。その出来事によって、過去の経験の意味がつながり直すことがあります。

ただ、どんな体験がその人の転機になるのかは、事前には分かりません。分かり切った結果へ導くことは、僕がやりたい支援とは少し違います。成長してくれたらもちろんうれしいけれど、予定していなかった受け取り方が、その人にとって大切な意味を持つかもしれない。5年後、10年後になって、ふと「あのときの経験」を思い出すこともあると思います。

高瀬: 体験を提供するときの難易度設定も難しそうですね。簡単すぎれば変化につながりにくく、難しすぎれば挑戦できない。

松本: 本当に難しいです。ただ、本人の状態を聞きながら、「こういう体験が合うのではないか」と考えることはできます。でも半分は、僕にも分からない部分を残しておきたい。予想外があるからこそ、その人自身がどう受け取るかという余白が生まれます。

変化のきっかけを用意することと、変化の結論を決めてしまうことは違う。人と人をつなげ、体験へ誘い、背中を押すことはできる。それでも、最後の一歩を踏み出すか、そこで何を感じるか、経験をどう自分の人生へ落とし込むかは、本人にしか決められない。

成功者に囲まれることよりも、挑戦の途中にいる人と出会える場所を大切にして欲しい。

ユースキャリアには、中学生から大学生を中心に、学力も、仕事の経験も、目指しているものも異なる若者が集まっている。共通しているのは、「今のままの人生では嫌だ」「何かを変えたい」という感覚を、どこかに持っていることだ。

しかし、最初から明確な夢や行動計画を持っている若者ばかりではない。変わりたい気持ちをまだ言葉にできない人もいれば、何を変えればよいのか分からない人もいる。松本さんとの対話を通して考えると、ユースキャリアの価値は、正解を教えることだけではなく、予想外の出会いや体験が起こりやすい環境をつくることにある。

その特徴の一つが、「挑戦を終えた成功者」だけでなく、「今まさに挑戦している人」と出会えることだ。

対談の中で高瀬は、ユースキャリアが関わった地域活性化イベントの話を紹介した。全国から多くの自治体関係者を東京へ招き、行政や企業とともに企画をつくる。運営側にとっても初めての規模で、調整は難しく、当日まで緊張が続いた。そこへ学生も運営として参加した。

普段は後輩を指導している先輩が、運営のために現場を走り回る。当日の司会をする先輩が、何度もリハーサルをする。目の前の仕事と必死に向き合っているその姿を見て、学生は「あの先輩達も、ちゃんと挑戦しているんだ」と感じてくれる。

松本: それはすごく大事だと思います。今は、努力の過程が見えにくく、成功した結果だけがきれいに見えやすい。たしかに、成功者の話に魅力を感じることは、挑戦の入口として意味があります。でも、成功した後の話だけを見ていると、自分との差が大きすぎて、かえって足が止まってしまったり、予想外の困難に直面してやめてしまうこともあります。

本当にエネルギーをもらえるのは、不安を抱えながら、現在進行形で何かに挑戦している人の姿ではないでしょうか。成功だけでなく、緊張や失敗も含めた過程を見られること。そして、その過程に自分も巻き込んでもらえることには、大きな価値があると思います。


ユースキャリアでは、学生が講義を聞くだけでなく、地域事業、企業との企画、イベント運営などに関わる。見学者ではなく、役割を持った当事者になることで、自分ができることと、まだできないことの両方に出会う。

また、年齢や所属の異なる人が混ざり、コミュニティ内外の企画を行き来することで、本人が最初から計画していなかった出会いが生まれる。誰と出会い、どの企画に参加し、どの役割を引き受けるかによって、その後の選択も変わっていく。

もちろん、機会を増やせば自動的に人が変わるわけではない。周囲が9割9分まで準備をしても、最後に勇気を持って一歩を踏み出すのは本人である。だからこそユースキャリアには、挑戦を促すだけでなく、どこから先を本人に委ねるのかを考え続ける責任がある。

研究者との対話から見えたユースキャリアの特徴をまとめるなら、「意図した答えへ若者を動かす場所」ではなく、「本人が予想していなかった人、体験、役割と出会い、自分で次の選択を決める場所」であることだろう。

人生の転機と出会える環境を、研究と実践でつくる

対談の最後には、松本さんの研究とユースキャリアの実践を接続する可能性についても話が及んだ。

大学生の数年間には、大きな変化がある。入学当初は何をしたいか分からなかった学生が、企画に参加し、役割を持ち、仲間と出会い、就職活動や起業に挑戦していく。短期間のワークショップだけでは見えない変化を、継続的に捉えられる環境がユースキャリアにはある。

松本さんにとっては、未練や転機の研究を、若者が実際に活動する場と接続できる可能性がある。ユースキャリアにとっては、これまで経験則で行ってきた支援を研究の視点から捉え直し、何が若者の変化に影響しているのかを検証できる可能性がある。

研究から得られた知見を実践へ戻し、実践の中で生まれた問いを研究へ返していく。その往復ができれば、「若者が変わる場所」を、運営者の感覚だけではなく、社会に共有できる知見として蓄積していけるかもしれない。

転機は、突然降ってくる特別な出来事ではない。少し怖い初めてに触れ、挑戦の途中にいる人と出会い、自分の過去を読み直しながら、次の選択を自分で決めていく。その積み重ねが、後から振り返ったときに「人生の転機」と呼ばれるのだろう。

変わりたいと思えないとき、無理に大きな目標を決めなくてもいい。まずは、自分が少し気になる場所へ行き、今まで会わなかった人と話し、初めてのことを一つやってみる。そこで何を感じ、どんな意味を見つけるかは、自分で決めていい。

人生を変えるための最初の一歩は、「変わること」ではなく、「何かが変わるかもしれない場所へ、自分を開いてみること」なのかもしれない。


インタビュアー

高瀬信軌
一般社団法人ユースキャリア教育機構 副代表理事

井上寛人
一般社団法人ユースキャリア教育機構 研究員

松本凱斗さんのご活動

  • 転機堂https://www.tenki-do.com/
  • ミュージカル A COMMON BEAT
    • 松本さんコメント:
      私自身が”転機への挑戦者”を体現すべく、9/19,20に【A COMMON BEAT】というミュージカルに出演します!!
      4色の大陸をモチーフに、多様性の豊かさと難しさ、そして全人類に通底する鼓動を表現する作品です。市民100人が100日間、必死で練習して舞台に立つ。『誰だって自己表現を楽しんでいい』、そんな想いを本気で伝えます!!

      もっと詳しく知りたい方へ➡https://musical-acb.com/
      会場はJR蒲田駅から徒歩4分の”アプリコ”、
      公演は90分、9/19(土)19:30~/9/20(日)13:00~, 17:30~の3回です

      ↓チケットはこちらから↓
      https://commonbeat-ticket-online.web.app/?cast_id=069-087
      カラオケから逃げてきた側の私も、終盤まさかのラッパーとしてセンター張ります(!?)
      研究者がラッパーやったっていい、若者の皆さんはもっともっと自由だー!!!!笑

ユースキャリア教育機構の活動について

学生の方へ

ユースキャリアの活動詳細や、無料説明会はこちら!

社会人の方へ

ユースキャリア教育機構の取り組みや、法人・自治体・学校関係者等の皆様との活動についてはこちら!