エンジニアというキャリアを選んで、6年経った今、思うこと。

<プロフィール>
富士通株式会社 所属
一般社団法人 ユースキャリア教育機構 理事 明治大学大学院 理工学研究科 卒

2017年よりIoTベンチャー企業でハードウェア/システムエンジニアを務め、その他にもAUTODESK株式会社で設計ソフトの広報活動(SNS運用や、1000人規模のイベント登壇など)、400人規模のクリエイターコミュニティ「Creator’s market」を創設し、MicrosoftやTBS等多数企業と連携など行った過去を持つ。

ーー胡本さんは現在はどんな活動をしているのでしょうか?

今は製造業のDX化に関わりながら、様々な会社の技術領域のプロジェクトマネジメントや、ハードウェアからソフトウェアに至る幅広い分野のソリューション開発などをしています。またその他にも投資家活動や学生のキャリア支援などの活動も行っております。ソリューションの開発やマネジメントを通して、「みんなが欲しいと思うもの」を作って届けられる人でありたいという想いでやっています。

ーー大学時代はどんな生活をしていたのですか?

 広島から上京した学生なので、入学当初は東京での日常の全てが初体験で、楽しく生活していました。特に大学1年生の時は、渋谷や新宿の有名店を、マップに登録して食べ歩いたり、楽しそうなフェスやイベントなどに、行きまくる大学生でしたね。また2年の夏には、カナダのトロントに語学留学しました。ケンブリッジ大学の教授で2週間ぐらい、家に住み込みで英語縛りの生活をしていました。そのおかげで向こうに行く前にだいぶ英語力がついたことは覚えています。

ーーエンジニアに興味を持った理由などはありますか?

 元々小学生の時からレゴブロックが好きで、レゴブロックで消防車や地球など、割と大きな作品を作って玄関に飾ってました。 将来の仕事は、何か物を作ることが出来たら良いなと思い、機械工学が学べる大学選びをしました。
 エンジニアを目指し始めたのは、大学2年の時にアイアンマンの映画を見て、衝撃を受けたことがきっかけです。何となく学生生活をしている場合ではない、何かやらなくてはまずいと思い、求人サイトからベンチャー企業のエンジニアを募集している会社を探しました。

ーー挫折や失敗の経験などありましたら教えて下さい。

大学2年生の当時はビジネスサイドから力をつけるべきか、技術のサイドから学ぶべきか悩んでいました。取り敢えずは技術のことを始めるのが重要だと思い、大学2年の1月からベンチャー企業のエンジニアを始めました。4カ月ぐらいやって気づいたことは、技術をやるためにはビジネスの知識がないと、その技術を活かせないということです。エンジニアとして案件を任されたときに、クライアントさんと会話が出来ないなど度々ありました。技術的に、「こんなサービスを提供できますよ」という話は出来たのですが、これがなぜお客さんにとって必要なのかや、その技術があることにより、何が実現できるのかの説明が全くできなかったです。お客さんが欲しいものの本質を、全く理解できてなかったです。そこからはエンジニアとしての技術だけでなく、ビジネス力も必要であると痛感しました。

ーーその後(挫折経験後)はどんなことをしましたか?

 まずは考え方を変えました。当時の僕は、ゴリゴリの機械エンジニア で、純粋に「俺はアイアンマンを作りたい。ハードしかやらない、モノづくりしかやらない」という意気込みで、プログラミングは邪道だという変な偏見も持っていました。自分がモノを創れるようになっても、それを説明出来なくては意味がないと思い、設計ソフトの外資の大手に入り、そこで広報のお仕事をしました。そこではラジオのパーソナリティーなどもしました。
 大学4年生の時には、「ハッカソン」という、所謂エンジニア業界のビジコンみたいなものがあるんですがそれに参加してました。当時は、レゴブロックみたいなものを組み立てたら、それが動く機械を作っていました。ブロックの中にモーターが入っていて、そのモーターがブロックをつけると反応してラジコンのように動く仕組みになっております。

ーー大学卒業後 大学院に進学されました。
大学院という選択をした理由などはあるのでしょうか?

一般的に言われていることは、学問の専門性を高めるためと言われていますよね。
でも僕はどちらかというと、2年間のモラトリアムが欲しかったからです。僕がやりたいことは エンジニアではあるのですが、企画の上流設計に関わりたいという想いがありました。要件定義って言われる事だったり、契約書も巻いたりとかできないと、社会人なったら詰むなと思いました。当時いろんな会社のプロジェクトマネージャーや、エンジニアのチーフの方とは会って話す機会とかはあって、ある程度の相場感が分かっていたので、今のまま卒業したら自分の思い通りのキャリアは難しいと思い、一旦大学院に行きました。

ーー自身の強みはどんなところにあると思いますか?

エンジニアからクリエイティブな分野まで広い領域に対して、分かる領域が多いことです。
エンジニアの中でも、ハードな仕組みが分からない人もいますし、デザインの領域に詳しい人もエンジニア領域が分かる人が少ないです。分かるから、マネジメントも出来るということですかね。その結果、お客さん視点に立ったソリューション提供や、幅広い技術と経営の2軸を広く見た上での戦略設計、マネジメントが出来るようになりました。

ーー事業規模の大きなプロジェクトに関わっているなかで、大変なことや苦労していることなどありますか?

 好きなことなので、仕事や業務内容としては、殆どないかもしれません。仕事が終わった後に、疲れを感じることも少ないですかね。最近は副業を中心に、プロジェクトマネージャー業などが多いので、人の責任を負うことに対して、精神的な疲労を感じる時があります。自分のマネジメントに抜けも漏れがあったがゆえに、思った以上にエンジニアや制作サイドが時間を割かれることになります。またクライアントに、しっかりと質の高いサービスを届ける責任もあります。最近は数千万、時には億単位の案件も受けることが多いです。相手は大きなお金を経費として使い、ソリューション(解決)を買っているので、その金額に見合ったサービスを提供する責任を感じてます。

ーーキャリア選択などに悩んでいる人に向けて、アドバイスなどありましたら教えて下さい。

 天職は一定程度、経験を積まないと分からないので、色んな事をやると良いと思います。
今でも人として一番尊敬している、高校時代の塾の先生人から、「自分が考えられるやりたいと思う職業全部やれ」と言われていて、大学時代は、飲食店、塾講師、運送の配達、工場でのライン作業、イベントスタッフなど色々な仕事をしてました。自分に合った仕事を探すために、色んな仕事を経験して、今の仕事に辿りつきました。僕の場合はモノ作りでも、ずっと開発だったり、ずっとモノ作りだったりは自分のやりたいこととは違って、やっぱりチームの中でやることが好きなんですよね。こういった細かい価値観などは、ホントに色んな経験をしないと分からないことなので、やりたいことが見つからない人はこのやり方はおすすめです。

(インタビュー:粂川達)