人々の信頼が大切だからこそ、ずっと関わりたいと思う事業を。山口正斗インタビュー。

<プロフィール>
NPO法人MIKs代表理事/瀬谷ハチミツリビングラボ代表。
1998年神奈川県横浜市生まれ。専修大学卒業直後にNPO法人MIKsを立ち上げ、デジタル推進講座を横浜市を中心に開催し、地域新聞に多数掲載される。現在は瀬谷ハチミツリビングラボ代表に就任し、2027年に開催される国際園芸博覧会をめどに、横浜市を蜂蜜で活性化するPJを、政策局、環境創造局、健康福祉局、教育委員会などと連携しながら進める。

無理に大きなことをする必要はない。まずは今の自分ができることから

ーー大学時代から、地域で様々な活動をしてきた山口さんですが、
大学時代はどんな生活をしていたのですか?

 1、2年の時は学校行ってバイトして、友達と遊ぶといったどこにでもいる普通の大学生でした。3年生の春頃から自分の将来の事が気になりだして、自分を変えようとビジネス書や自己啓発書を読んだりし始めました。所謂、意識高い系ですね(笑)。様々な本を読んだ結果、そこに共通して書いてあることは「行動しろ」というメッセージでした。しかし当時、スキルも経験もない自分にとっては何をやるべきかも分からず、行動はできませんでした。私が本でよく目にする世界の「行動」とは、起業することや事業を立ち上げることなど、当時の自分からしたら非常にハードルが高かったからです。
 そんなある日、本を探しに図書館に来てるときチラシを見ていたら、地元向けの教室の案内が沢山ありました。例えば「健康講座」「歴史講座」「パソコン講座」などです。行動としては、何かを人に教える体験でも良いと気づきました。スマホを高齢者に教える、スマホ講座なら自分でも教えられると思い、始めることにしました。思いついた翌日から、全然知らない地域の高齢者に、スマホの講座の需要があるか30人以上聞きこみもしてました。
これが今のNPO団体MIKsの活動としての最初の一歩になっています。今振り返ると、当時は取り敢えず何でも良いので行動したかったんだと思います。
 今現在、実力や能力が無くて何をやれば良いか分からない人も、無理にいきなり大きな目標を目指す必要はないと思うんですよね。まずは自分が出来ることから初めて見るのが大切だと思います。

『世代間コミュニケーションの懸け橋に』

ーーNPO法人MIKsとは具体的にはどんな活動をしていらっしゃるのでしょうか?

 僕たちはデジタル推進の為の活動をしています。メインとなるターゲット層は横浜市を中心とした高齢者の方です。近年の急速なデジタル社会により、高齢者の方もスマホなどのその他電子機器を1人1台以上持つことが一般的になっています。
 しかし現状は電話以外は、その他の機能を使えないという高齢者の方も多くいます。自分の孫や子どもからも、使用方法を教えて貰う機会などもそう多くはないそうです。
携帯を使ってコミュニケーションを多くする若い世代との会話に、大きな障害も感じています。そんな悩みを持っている高齢者と、若い世代との世代間コミュニケーションの懸け橋になる一歩になったらと思い今の活動をしています。最近ではスマホ講座をやるためのスマホサポーターを養成する講座もやったりしています。所謂「教える人」を教える講座です。
この講座をやりだしてから、教えられる人の数もかなり増えたので今後も続けていきたいです。

ーー地域の活動で大切になってくるのは地域住民からの認知であると思います。
NPO法人MIKsの活動を知ってもらうためにどんなことをしましたか?

団体立ち上げ当初は、自分から市役所や行政の方に協力のお願いをしていましたが、最初はなかなか相手にされませんでした。しかし活動を続けていくうちに、力を貸して下さる人は増えました。特に地域新聞にNPOの活動が取り上げられるようになってからは、市役所、区役所、社会福祉協議会などから連携の話を頂けるようになりました。最近は横浜市もデジタル推進に力を入れ始めて、「ICTお助け隊」というサポートがあるんですが、それを手伝ってくれないかという依頼も頂いています。

ーー山口さんは元々、地域や地元に関して何か還元したいなという思いはあったのでしょうか?

活動を始めた当初は『地域活性をやりたい』、『社会貢献をしたい』という気持はそんなに強くはなかったです。目の前にある自分ができることをやり続けた結果、今があると思っています。MIKsの活動を通して、地域の人たちと関わる機会が増え、地元に対して有難みと愛着を感じるようになりました。

ーーNPO法人MIKsの目標など教えてください

将来的には横浜市が『デジタルが進んでいる地域』としての象徴的な街になれば、嬉しいと思っています。またNPO法人MIKsを使ってお年寄りの方がSNSを活用したサロンのようなものを作ろうかなと考えています。地元密着型高齢者向けのオンラインサロンは日本を見ても恐らく前例がないと思いますので、そこにチャレンジしていきたいと思います。デジタルに強い高齢者が増えたら可能なことであると思います。

雇用を増やす地域に産業を。

ーー山口さんが今代表として主導している、瀬谷ハチミツリビングラボというのはどんな活動ですか?

簡単に言うと、みんなで協力して横浜市をよくする為の1つのプロジェクトです。
リビングラボというのは、横浜市が中心となり循環型経済を作るために推し進めているプロジェクトで、オリーブや石鹸の生産など横浜市の様々な区で、独自の企画を進めております。瀬谷ハチミツリビングラボのPJは元々、NPOの活動でタウンニュースに乗ったときに、デジタル推進の政策のキーワードにしている横浜市瀬谷区の議員の方から、連絡を頂いたことをきっかけに始めました。その議員さんと話していく中で、2027年に開催される国際園芸博覧会に向けて、地域が盛り上がる事業を一緒にしたいという話になりました。当時、私の住んでいる地区である瀬谷区にはリビングラボがなかったので、去年の11月ごろに立ち上げることにしました。ちょうどその政治家さんは蜂蜜が好きで、蜂蜜について話を聞いたら可能性がある分野であると思ったので、瀬谷ハチミツリビングラボを一緒に立ち上げ始めることにしました。

ーーハチミツにはどんな可能性を感じていますか?

 本格的に瀬谷区で蜜蜂を育て始めたら、まずお土産になります。お土産以外にも蜜蜂を使った事業は汎用性が高いということも分かりました。ミツバチは花の蜜を集めて蜂蜜を作りますが、その際に草花を受粉させる役割を果たしていて、実は草花には欠かせない存在なのです。受粉によって草花が生き生きして実がなれば、今度はそれを目的に鳥や他の昆虫なども集まってきます。ミツバチは、緑や生態系を豊かにしてくれる生き物なのです。またハチが育つ環境には花が必要です。そのためには、花を植えることができます。結果的に自らの手で景観形成する体験もできます。国際園芸博覧会は1千万人の来場者が来ると言われています。実際に瀬谷区を訪れた人に対して街をPRできることはそうそうない機会なので、盛り上げていきたいと思います。日本でも、蜂蜜を育てている地域はありますが、蜜を採取してそれを売るといった単体の事業として行っている事業者が多いです。私達はハチミツを使って、その地域に住んでいる人の生活を豊かにする活動をしたいと思います。

ーー2つの活動を通して大変なこと、苦労していることなどありますか?

正直に言うと期待している答えでは無いと思いますが、事務関係の業務ですかね。(笑)
特にNPOの書類関係は量も多いですし細かいルールもあるので大変です。これからNPOを立ち上げたいと思っている方も多いと思いますが、部下や外部の人に頼まず僕は自分でやることをお薦めしています。僕自身も1つの勉強だと思って、色々調べながら全て自分でやっております。

人々の信頼が大切だからこそ、ずっと関わりたいと思う事業を

ーー5年後、10年後のビジョンなどありましたら教えてください。

どんな事業をやっているとかはなかなか想像できないですね。行政の人たちと連携して、事業をやっていくと自分の思いも寄らない分野について関心を持ったりすることも結構あります。皆さん共通点であると思いますが、自分がやっていて楽しい事業をやっています。
その中でも特に、長期的に自分が事業を続けたいと思えるものを選んでいます。
いま私が携わっている事業はどれも、多くの人の支えや協力のもとに成り立っています。時には善意によって動いて下さることもあります。そんな中で一番重要なことは地域や地元の皆さんからの信頼です。その信頼を得るためには、しっかりと継続して活動をやっていかないといけません。だからお話を頂いた時には、5年後、10年後も自分がその事業をやっていきたいと思えるか考えますね。今では有難いことに行政の方からお仕事の依頼が来ることもあるのですが、全ての事業に関われる訳ではないので、自分の中で優先順位をつけることは大切かもしれませんね。

(インタビュー:粂川達)

山口さんの活動の詳細は、こちらから御覧ください。

瀬谷ミツバチビルディングラボ
https://livinglabsupportoffice.yokohama/livinglab/seya/
MIKs(地域活性)
https://miks.work/